嵐の中の平安 Ⅰ.嵐のただ中にある平安 海外のある町での出来事です。その町の美術館では、毎年恒例の絵画展が開かれていました。その年のテーマは「PEACE」(平安)でした。大きなスポンサーがついて最優秀作品には、多額の賞金が与えられることになっていました。広告を見た多くの画家たちが「平安」を題材にした作品を描き、この絵画展に応募しました。のどかな田園、静かな森の小道、せせらぎ、夕日がしずむ穏やかな海辺、公園のベンチで寄り添うカップル、会場となった美術館には心を和ませる素晴らしい作品が何枚も展示されました。 展示会も最終日を迎え、いよいよ審査員たちによって、受賞作品を決めるための投票が進められて行きました。最後まで残った数枚はどれも素晴らしい作品でしたが、一枚だけ、とても「平安」を連想させるとは思えない、場違いな作品が混ざっていました。銅賞、銀賞、金賞、そして最後に、最優秀賞が発表されました。その結果に、参加者は驚きを隠しませんでした。最優秀賞を勝ち取った作品は、嵐にさらされる岸壁を題材としたあの絵だったのです。 暗雲立ち込める暗い空、天を切り裂く稲妻、海岸の岸壁に打ち付ける荒波、いったいこの絵のどこに「平安」があるのでしょう。その絵が何を描いているか理解するためには、じっと観察しなければなりませんでした。よく見ると、岸壁の中ほどに、小さなくぼみがあり、そこに雛を抱えた母鳥が見えます。雛たちは母鳥の翼の下で、安心しきって眠っています。確かに、そこに「平安」があるのです。この絵には「嵐のただ中にある平安」という題がつけられていました。 私たちは、だれでも、穏やかで平穏な人生を送りたいと願っています。しかし、その願いとは裏腹に、私たちは、様々な問題や思いがけない試練に遭遇します。長い人生の中では、自分の力では到底乗り越えることのできない、大きな困難に直面して、押しつぶされそうになるときもある、と思います。 「嵐のただ中にある平安」と題したこの絵の作者は、激しい人生の嵐を経験し、その困難な状況の中にも「平安」を見出したのだと思います。この作品が、他のどの作品よりも、見る人の心に訴えたのはそれが理由ではないでしょうか。 Ⅱ.シャローム イエス様は、たびたび弟子たちに向って「平安があるように」と語り掛け、天に帰って行かれる前に、「わたしの平安を残す」と約束されました。 ◆ヨハネの...